関節リウマチに関する Q&A

関節リウマチに関する Q&A

手が動かしにくい時があります。この程度でも受診した方がいいですか?

関節リウマチはできるだけ早期に適切な治療を行うことで、寛解しやすい疾患です。早期のリウマチの可能性もありますので、手の動かしにくさ、こわばり、関節の腫れや痛みがはっきりしない場合でも、違和感があるようでしたらできるだけ早めに受診してください。症状のある関節の超音波検査(エコー検査)や抗CCP抗体などの血液検査のような早期リウマチの診断に有用な検査があります。また、手指だけでなく、原因不明の微熱、食欲不振、体重減少、めまいや立ちくらみ、ドライアイ・ドライマウスなどが初期症状として現れることもあります。こうした場合も、お気軽にいらしてください。

リウマチが遺伝するのではと心配です。遺伝しますか?

関節リウマチなど自己免疫疾患の発症には遺伝的素因も関わっていますが、環境因子も複雑に関与しているとされています。遺伝的素因に限ると、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児の片方が関節リウマチになった場合、もう片方が関節リウマチを発症する割合は24%程度であり、発症しない割合の方が3倍以上とはるかに多いのです。また、関節リウマチの患者さんで親族内に関節リウマチのかたがいらっしゃる頻度は約1%です。つまり、心配になるような高い確率とまでは言えません。
関節リウマチは治療法の進歩によって、関節変形や骨破壊になる前に寛解が目指せる病気であり、薬を中止しても寛解を維持できる可能性もあります。関節リウマチについて正しい知識を持っていれば、万が一にも身近な方が関節リウマチになった際に早期発見につながりますので深刻な症状を起こさないまま寛解を維持できる可能性が高まります。遺伝の心配よりもこうしたメリットに目を向けてみてください。

人間ドックでリウマトイド因子(RF)の数値が高いといわれました。

リウマトイド因子(RFあるいはRAテストという場合もあります)は、関節リウマチの患者さんの70〜80%で陽性となりますが、逆に、陽性だからといって必ずしも関節リウマチであるとか、将来かならず関節リウマチを発症するということではありません。年齢によっても異なりますが、健康なかたでも約20%は陽性と言われています。したがって、リウマトイド因子の異常が病気のサインかどうかについては、症状やほかの検査を参考にして判断する必要があります。精密検査が必要かどうかも含めリウマチ専門医のいる当院にご相談下さい。
参考までに、関節の痛みと腫れがある場合、血液検査のリウマトイド因子あるいは抗CCP抗体が正常値の3倍以上の高値(陽性)の場合には、3倍未満の陽性に比べて関節リウマチと診断される可能性がやや高くなると言われています。

リウマチ性多発筋痛症と言われました。完治する病気でしょうか?

リウマチ性多発筋痛症は関節リウマチとは別の病気です。比較的高齢者(発症年齢は50歳以上からみられ、70歳代がピーク)で両肩の痛み、血液検査の炎症反応(CRPあるいは血沈)の上昇がみられます。37℃以上の発熱や体重減少、疲労感、抑うつ症状が見られることもあります。肩や上腕の痛みが強い場合は、腕が上がらない、洗面の動作ができない、上着が着られない、夜中や明け方に痛みが強くて目が覚めるなどの症状が、また、腰回りや大腿部の痛みが強い場合は起立動作や歩行が困難な症状がみられます。関節リウマチと異なり、手指の関節炎にはなりにくくリウマトイド因子や抗CCP抗体は陰性で、また、筋の酵素(クレアチンキナーゼ、CKあるいはCPKとも言います)は正常値であることが特徴的です。関節超音波検査(エコー検査)では、症状ある肩関節や股関節で滑液包炎が認められます。プレドニゾロン10〜20mg/日の治療で早期に症状は改善しますが、ステロイドの減量は少しずつ数週間ごとに行い、ステロイド減量中に再燃することもあり、通常は1〜2年以上の治療が必要になります。巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)の合併が多く、頑固な頭痛や顎の痛み、視力障害などの症状があれば、速やかに診断して大量のステロイド治療が必要になります。また、隠れた悪性腫瘍によってもリウマチ性多発筋痛症と同じ症状みられることがありますので、早期の診断、合併症の精密検査、ステロイドの副作用(高血圧、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症、感染症、血栓症)についても、リウマチ専門医に相談が必要です。

リウマチは、いつか完治する病気ですか?

関節リウマチは、免疫抑制薬のメトトレキサートなどの有効な薬剤が登場し、さらに状況に応じて生物学的製剤を使うことで寛解できるケースが大幅に増加しています。また薬物療法を続けて寛解を維持するだけでなく、徐々に減薬して薬を全く使わない休薬でも寛解を維持できる方の数も増えてきています。
休薬しても寛解を維持できるのは一般的なイメージでは完治と感じられると思いますが、正確には再び症状が現れる再燃をその先の生涯を通じて起こさないことで完治したと評価できます。こうした治療が可能になってきたのは最近ですから、「リウマチが完治」できるかどうかを検証するのはこれからです。メトトレキサートや生物学的製剤などのリウマチ治療薬を長期に連用することの安全性や経済的な側面、有効性の維持なども考慮して、主治医と十分相談して、寛解後の治療を決めていきましょう。
完治するという言葉にとらわれず、まずは関節の破壊を止めて痛みなどを和らげ、寛解を実現したらそれを維持し、減薬から休薬というように、段階に合わせた目標を持つことをおすすめしています。

何年か治療を受けてきたのですが、自分の状態がよくわからず不安です。

関節リウマチの治療では、概ね3か月ごとに、病状や治療効果を客観的な数値で評価する疾患活動性評価指標に基づいて状態を把握しています。CDAIやSDAI、DAS28といった指標が使われております。治療効果が不十分であれば治療薬の増量や併用療法、他剤への変更を行い、関節破壊を防止します。
関節リウマチの治療では、疾患活動性評価指標に基づいた評価を行った上で適切な治療につなげています。病状を客観的に評価することではじめて、治療の効果が判断できますし、寛解に近づけるよりよい治療につなげることができます。

治療薬の選び方がよくわかりません

最近の関節リウマチの治療の方針は、関節破壊を防止するために、早期の段階で治療を開始すること(window of opportunity)が推奨されています。世界標準薬であるメトトレキサートを使用することが基本ですが、活動性や関節破壊の状態、妊娠している・または妊娠を考えている、リウマチ以外にも疾患があるなどの場合には、慎重に治療薬を選択します。そして、定期的な診察、検査を行って効果や副作用をモニタリングしつつ、疾患活動性評価指標に基づいて病状を把握しながら治療方法をその都度検討します。副作用を回避して疾患活動性を低下させ寛解を達成するという明確な治療目標を目指すために、主治医とよく相談し納得した上で治療薬を選択しましょう。

生物学的製剤への移行のタイミングについて教えてください

関節リウマチの治療においては、早期に診断して速やかにメトトレキサートの使用を開始すること、必要な場合には生物学的製剤を早期から使用することが推奨されています。具体的には、メトトレキサートなどの既存の抗リウマチ薬(DMARD)を通常用量で3ヶ月以上継続使用してもコントロール不良の場合、X線検査などで関節病変が進行している場合などです。また、治療歴のない場合でも、罹病期間が6ヶ月未満のリウマチ患者さんでも関節の症状が強く検査(X線やリウマチ血清反応)所見が良くない場合は、メトトレキサートとの併用を考慮するとガイドラインは推奨しています。一方で、生物学的製剤は関節リウマチ患者の臨床症状改善・関節破壊進行抑制・身体機能の改善が最も期待できる薬剤ですが、投与中に感染症や心不全、肺炎などの重篤な有害事象を合併する可能性もあるため、投与開始前に検査などで十分に検討し、投与開始後も定期的なモニタリングを行って、有害事象(副作用)の早期発見に努める必要があります。費用が高い治療薬ですが、関節破壊を防止する効果が非常に高い治療でもあります。また、最近では、費用面で有利なバイオシミラーも登場しております。

受診のたびに血液検査を行うのはどうしてですか?

血液検査は、炎症の程度といった病状や治療効果の把握、そして副作用の有無を確かめるために行います。例えば、リウマチ治療の世界標準薬であるメトトレキサートの添付文章には、「骨髄抑制、肝・腎機能障害等の重篤な副作用が起こることがあるので、本剤投与開始前及び投与中、4週間ごとに臨床検査(血液検査、肝機能・腎機能検査、尿検査等)を行うなど、患者の状態を十分観察すること。」と、月1回の受診、検査の必要性が記載さております。安全に適切な治療を行うために、定期的な血液検査は不可欠です。

メトトレキサートの長期服用に問題はないでしょうか?

関節リウマチ治療の世界標準薬であるメトトレキサートは、関節症状や関節破壊を抑制する有益なお薬ですが、副作用もあるため、定期的な診察、検査によって有害事象の早期発見も欠かせないお薬でもあります。十分な効果が得られて寛解状態を続けるためには、数年を超えて同じ治療を継続するのが原則となっています。長期服用による副作用を考えて、寛解状態が維持されている場合には、減量や中止も考慮されますが、継続した時の副作用と中止したときの症状の悪化・再燃の問題を比較し、主治医と良く相談しながら治療に取り組んでいきましょう。

リウマチになったら一生治療を続けないとダメですか?

関節リウマチは一昔前、寛解を維持できて治った状態にできる確率が10~30%程度でしたが、現在は治療薬や治療法が進化して、薬物療法を続けながら寛解を維持できる方が飛躍的に増加しています。さらに、薬物療法を中止しても寛解を維持できる完治した状態になる方も増加傾向にあります。
基本的に早期に発見して適切な治療を続けている方に寛解を実現するケースが多いのですが、長く治療を続けてきた方にも寛解維持できるケースが現れています。
地道にしっかり治療を続けていき、検査でしっかり状態を把握し副作用のモニタリングをしながら慎重に減薬していくことが不可欠ですから、焦らずに治療に取り組んでいきましょう。

こどもがほしいと思っていますが、リウマチでも大丈夫ですか?

関節リウマチでも妊娠は可能です。一般的な関節リウマチの女性の妊娠の条件として、リウマチの病状が安定していること、腎臓や肝臓、心臓、肺などの内臓に重大な病変がないこと、免疫抑制剤(メトトレキサート、アザチオプリン、シクロホスファミドなど)を服用していないこと、が挙げられます。関節リウマチで病状が安定しない場合、不妊リスクが高くなるとされています。また、妊娠を考えはじめたら、薬の処方内容を変更する必要がありますので、早めに主治医に相談して、妊娠・出産・授乳の期間の治療計画をあらかじめしっかり立てておきましょう。湿布も妊娠の時期によっては禁止されているものもあります。胎児への影響が少ないリウマチ治療薬としては、プレドニゾロン(15mg/日以下)、サラゾスルファピリジン、タクロリムス、セルトリズマブ・ペゴル(シムジア)、エタネルセプト(エンブレル)などです。なお、妊娠中には、関節リウマチの症状が軽くなるケースが半数程度あるとされていますが、出産後に悪化するケースもあることから慎重に考える必要があります。
男性のリウマチ患者の場合、メトトレキサートやアザルフィジン、レフルノミドは男性不妊があるので妊娠計画の3ヶ月前に中止することが勧められています。

授乳中ですがメトトレキサートを服用しても大丈夫でしょうか?

母乳には赤ちゃんを守り育てるために重要な成分が含まれており、また、スキンシッップという意味でも授乳は大切なお母さんのお仕事です。しかし、メトトレキサートの添付文章には、授乳婦には投与しないことと記載されておりますので、ミルクでの育児が勧められています。授乳中も使用できる薬としては、プレドニゾロン、サラゾスルファピリジン、タクロリムス、アザチオプリン、セルトリズマブ・ペゴル(シムジア)、エタネルセプト(エンブレル)、アダリムマブ(ヒュミラ)、インフリキシマブ(レミケード)などです。

リウマチの治療を受けていますが、ワクチンは受けた方がいいでしょうか?

関節リウマチ治療では肺炎に注意する必要があります。肺炎の原因としてもっとも多いものが肺炎球菌やインフルエンザです。肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンは不活化ワクチンといわれ、感染力のないワクチン製剤ですので、リウマチの治療中でも接種が可能です。一方、はしか、風疹、水ぼうそう・帯状疱疹などのワクチンは生ワクチンといわれ、感染力が弱まったウイルスで作られていますので、ウイルス感染が生じるリスクがあるため、抗リウマチ薬の治療を受けている場合は、受けることができません。なお、帯状疱疹ワクチンには不活化ワクチン製剤も登場しております。
新型コロナウイルスワクチンについては、日本リウマチ学会ではステロイドをプレドニゾロン換算で5mg/日以上または免疫抑制剤、生物学的製剤、JAK阻害剤のいずれかを使用中の患者は他の人たちよりも優先して接種した方がよいとしております。

飲酒・喫煙はリウマチの治療にどのような影響がありますか?

アルコールは一般に炎症を悪化させるといわれております。過度の飲酒は、炎症を悪化させるだけでなく、肝臓や胃腸にも負担をかけ、リウマチ治療薬の副作用を助長するリスクもあります。適度な飲酒を心がけるようにして下さい。
喫煙は、肺や心臓疾患、動脈硬化、胃潰瘍、がんなどのリスクを上げるといわれております。リウマチ治療の妨げになる可能性がありますので、禁煙、断煙をお勧めしております。

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