貧血、鉄と発達

貧血、鉄と発達

こどもでも貧血になることはあり、一番原因として多いのが鉄欠乏性貧血です。赤血球は酸素を運ぶ役割をしていますが、貧血になってしまうと酸素を運ぶ力が弱くなってしまい、「顔色が悪い」「疲れやすくなる」「不機嫌が多くなる」「頭痛やめまいがする」「集中力や注意力が低下する」「氷をかじりたくなる(異食症)」などの症状が出てしまいます。こどもが貧血を起こしやすい時期がありますが、「乳児期」と「思春期」です。

(1)乳児期の鉄欠乏性貧血

生後5〜6ヶ月になると赤ちゃんがお母さんのおなかの中でもらった鉄のストックが底をつきてしまいます。またこの頃の母乳の鉄分は、最初の頃に比べて6割程度に減ってきます。乳児期の赤ちゃんの体はどんどん成長していますので、この時期にミルクや食事で成長に応じた十分な鉄分を摂ることができないと貧血になってしまいます。
頑張っても離乳食が進まないお子さんは、鉄分の豊富なフォローアップミルクを9ヶ月頃から活用してみましょう。大人が毎日食べたいものや量が変わるように、赤ちゃんもどんなに工夫しても離乳食を食べてくれない時はあります。でも、がっかりしたり、無理強いしたりしないでください。赤ちゃんに「食べることは楽しいこと」と思ってもらえると離乳食が進みやすくなりますし、体だけでなく心にも栄養をあげることができるでしょう。

(2)思春期の鉄欠乏性貧血

思春期も急激に身体が成長する時期です。特に女の子は生理の出血で鉄が失われやすくなります。激しいスポーツをしているお子さんが鉄欠乏性貧血になることがあり、ジャンプやランニングにより足底で赤血球が破壊されること、鉄が汗と一緒に排泄されてしまうことなどが原因として考えられています。

鉄欠乏と発達

鉄は脳の細胞と細胞の間の刺激が伝わる成分を作る上で重要です。2歳以下のお子さんで鉄欠乏状態が3ヶ月以上続くと、認知能力、運動発達、社会性や情緒発達に影響を与える可能性があると言われています。さらに、離乳期の鉄欠乏による貧血が続くと、発達の遅れをその後何年も引きずってしまう可能性があることがわかってきました。生まれたばかりの赤ちゃんの脳はまだ完成していないので、赤ちゃんの脳の発達には鉄を必要としており、この時期に鉄不足になってしまうと赤ちゃんの脳にとっては一大事です。
また、思春期のお子さんの鉄欠乏性貧血では、情緒の障害、認知力の低下などの症状が出ることがあります。不規則な生活や無理なダイエットにも注意しましょう。

鉄欠乏性貧血の治療

貧血になってしまった場合は食事療法だけでなく、処方された鉄剤を内服する必要があります。お子さんに不足した鉄を急激に補充することはできませんので、鉄剤の飲み薬を数ヶ月内服します。鉄は不足しても困りますが、過剰に摂りすぎることも問題が出ますので、漫然とサプリメントを内服することはおすすめしません。
今まであまり離乳食を食べてくれなかった赤ちゃんが、内服治療で貧血が改善されると、今度は楽しくよく食べてくれるようになることも多いです。

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