関節リウマチの検査

早期診断の重要性

早期診断の重要性関節リウマチは未治療のまま放置するとわずか2年で関節破壊が30%近くまで進んでしまうことがわかっています。特に発症半年までは破壊が進みやすいとされているため、早期診断と治療がとても重要です。これまで関節リウマチでは関節の破壊が長年かかって徐々に進むとされていたため、そうした間違ったイメージから受診を先延ばしにするのは危険です。

現在は、関節リウマチを早期発見できる診断基準が確立していて、作用が異なる効果的な薬剤が何種類も使えるようになっています。以前は、関節の痛みを抑えることが治療目標でしたが、現在では、メトトレキサートや生物学的製剤の治療により、病勢を完全に止める「寛解状態」の維持が可能となってきました。関節の破壊を最小限で食い止めるためには、早期の受診による適切な診断・治療が不可欠です。朝、起きてすぐに感じる手指のこわばりや動かしにくさなど、関節の違和感を感じたら、「歳のせいだから」「普段の生活には支障がないから」などと放置せずに、できるだけ早く当院にご相談ください。

関節リウマチの検査

血液検査

血液検査では、関節リウマチの可能性を調べるリウマトイド因子(リウマチ因子、RF)や抗CCP抗体、炎症の状態を把握する炎症反応や軟骨破壊に関わっているタンパク質分解酵素のMMP-3などについて調べます。関節リウマチでもリウマトイド因子や抗CCP抗体が陰性になるケースが10~20%あるとされているため、確定診断には血液検査に加えて、関節の超音波検査(エコー検査)やMRI検査などほかの検査も必要です。

リウマトイド因子(RF)

関節リウマチでみられる自己抗体の1つで、ヒトのIgGというタンパク質に対する抗体です。関節リウマチの場合、70〜80%で陽性になります。健康な人でも約20%でも陽性になります。一方で、全身性エリテマトーデスなどのほかの膠原病や肝炎、慢性感染症でも30%以上で陽性になり、関節以外に気になる症状、例えば、皮膚症状や眼や口の乾燥症状などがあれば、当院にご相談下さい。

抗CCP抗体

感度・特異度が高く関節リウマチの診断に有用な検査です。陽性の場合、関節リウマチの可能性が高いのですが、陰性でも関節リウマチの可能性があります。抗CCP抗体は発症前に陽性になることがあり、リウマトイド因子より早期発見に有効だとされています。抗CCP抗体の数値が高い場合、関節破壊が進行しやすいとされています。当院では、関節や全身の症状について丁寧は診察をこころがけ、そのほかの検査(炎症反応や関節超音波検査)と組みわせて総合的に判断します。

炎症反応

CRP(シーアールピー)やESR(血沈)を調べることで、炎症の程度がわかります。関節炎・滑膜炎の病勢の指標となりますが、その他の感染症や炎症性疾患でも上昇するため、診察やその他の検査結果などを総合して判断します。

MMP-3

滑膜の炎症や軟骨破壊に関わっているタンパク質分解酵素で、この数値が高い場合には関節内の炎症が強いと判断できます。関節リウマチにおいては病勢の指標として有用ですが、ステロイド治療中のかたや全身性エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛症、乾癬性関節炎など関節リウマチ以外の膠原病でも増加することが知られています。

X線検査

関節リウマチでは、ほかの疾患との鑑別や診断、進行度であるステージ判定のためにX線検査を行います。関節周囲の骨が薄くなる骨粗鬆症、関節の隙間が狭窄して動きにくくなる強直、骨がところどころ失われている骨びらんなどの有無や状態を確認できます。例えば、手足のX線写真を用いて関節破壊の変化を評価します。

エコー検査

関節に超音波を当て、骨、滑膜などの炎症、血流といった状態を直接リアルタイムで観察できる検査です。安全性が高く、痛みなどもないため繰り返し検査できるという特徴があります。微細な滑膜炎の発見が可能なことから早期発見に有用であり、ほかに治療効果の判定や処方の調整、寛解時の薬服用中止判断のためにも行われます。当院では、関節の評価に適したエコー装置を用いて、リウマチ専門医が実施しております。

MRI検査

関節MRI検査では、早期関節リウマチにおける滑膜炎や骨髄浮腫および、X線検査ではわからない骨の変化を観察することが可能です。 MRI検査が必要な場合は、関連医療機関と連携してMRI検査を実施致します。

関節リウマチと診断されたら

関節リウマチと診断されたら一昔前には、有効な薬剤が存在しなかったため、関節リウマチは完全には治らず痛みを抑える治療が主体でした。現在は優れた効果を持つ薬剤が登場し、適切な治療を行うことで関節痛が消えて血液検査結果も正常になる寛解率が飛躍的に上昇しています。関節の痛みや腫れが無く、血液検査でも炎症反応が正常となり、関節の変形や破壊を抑えることが可能になっております。また、状態を見極めた上で薬物療法を中止した結果、薬を一切使わずに寛解を維持できているケースもあります。
特に、早期で発見された場合、ガイドラインに則った適切な治療を行うことで生活に支障なく寛解(治療を続けながらリウマチの症状がほぼ消失した状態)を迎え、そのまま維持できるケースが増えています。当院では、ガイドラインに沿って処方する薬剤は必要最小限に抑え、寛解を目指した治療を行っています。ステロイドは関節痛や腫れの解消に有効ですが、使い続けると骨粗鬆症などの副作用を起こすリスクがあるため、減量・中止を最初から視野に入れた上で使用しています。

生活への支障を最小限に抑えるためには、確定診断を受けて状態を正確に把握し、できるだけ早く適切な治療を受けることが不可欠です。関節リウマチかもしれないと思ったら、お気軽にご相談ください。 

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